【5】話題の挽肉の筋と、ハンドチョップされたクラフトバーガーの記憶
炭火焼きの挽肉ハンバーグと羽釜炊きのご飯がうりの飲食店で、名物ランチをいただいてきた。巷で話題のグルメ体験をできたのは良かったが、筋っぽさが引っかかり、過去にハンバーグの概念を覆されたハンドチョップのハンバーガーへの恋しさが残った。
話題の店は11時開店なのだけど、当日朝9時くらいから並んで記帳することで、当日の整理券を受け取ることができるシステム。
炭火焼の煙が1ブロック先から香っていて、店の前はいつも長蛇の列。価格は1,500縁程度だけど、店に2回出向かないとならなく、若干ハードルが高い。真向かいの家具屋の女性店員は、「近くて遠い店(物理的には近いのに精神的に遠い)」と言っていた。
今日は体調も回復していて、朝から買い物に出かけることにした私。途中、ハンバーグ店に寄ってみたら「記帳できます」という看板が。午前中に記帳終了のこともあるので、目を一瞬疑った。平日の午前11:30頃、Twitterでも記帳終了とのアナウンスはない。しかし待っても店員は整理券を持った客の対応に忙しく、記帳の受付をする様子はない。
不安になって店員に聞いてみると、「こちらでお待ちください」の一言。どうやら大丈夫そうなので気長に待つことに。
30分後くらい待った頃、店員から「12時半ごろに戻ってきてください」と言われ、整理券を渡された。
買い物をして指定の時間前に店に戻ると間も無く案内された。
一点を除いては全体的に美味しかった。味噌汁もちゃんとしていた。米は新潟県佐渡産。ご飯の盛りは少なめだけど、おかわりは何杯でもできるし、大盛りを頼んでいる人もいたので真似をした。メインのハンバーグは噂通り、焼きたてでしっとりジューシー。ただ、出てきたハンバーグ3つ全てに筋があり、もやもやした。
後から他人のレビューを見たら、やはり「スジが多い」というコメントが複数。やっぱり気になったのは、私だけじゃなかった。なぜあんなにスジっぽいのか気になり、ネットを調べてもすぐに答えは出てこない。答えにはなっていないが、ハンバーグとしてはスジっぽくないほうが美味しいと思う。
例えば、東池袋二丁目に「No.18」というハンバーガー屋のハンバーグを食べてみれば分かる。スジは一切感じられない。ただ噛むごとにパティーの粗いようできめ細やかなしっとりした繊維が口の中で解けていく......。
同店をハンバーガー特集で紹介したグルメ雑誌「dancyu」によると、機械で挽肉にしているのではなく、包丁で「ハンドチョップ(手切り)」しているとのこと。手間暇がかかっている分、さぞ美味しいのだろうが、文章を読んだだけでは、想像がつかなかった。けど、いざ食べてみると、その食感は画期的で、期待以上に感動させてくれた。ハンバーガーの概念を覆す、初めての食感だった。
私は食いしん坊ではあるけど、もともとハンバーグが特に好きなわけではない。正直な話、ハンバーグに満たされることをあまり期待をしていないから、積極的には食べない方だ。でもせっかくハンバーグを食べるのなら、ハンバーグ好きに選び抜かれたものをいただくようにしているので、比較対象は少ないかもしれないが、自ずと最高級のものとの比較になる。
今回の挽肉ハンバーグと羽釜炊きご飯の店は、相当話題になっていて、住んでいる場所から近いために行けていい経験にはなったが、スジだけに最後まで引っかかるものがあった。
それは、ハンドチョップされた、スジのないクラフトバーガーのパティーを食べた時の感動だ。