『きんしんかん:性加害のニワトリとたまご』

ある本がきっかけで、逃げるように東京に移住した日系アメリカ人の斎氣心。初めて心を開ける人に出逢うも、彼にDVをしてしまう。確執が長年ある母親のような自分に絶望した。原因は、母の「躾(暴力)」と女性ホルモンだと考え、低容量ピルYAZを服用したが、副作用で臨死した。古今東西の代替医療による精神治療を試行錯誤する中、幼児期に父親から受け始めた猥褻を自覚する。それでも問題が雪だるま化するため、両親に虐待の事実を問いただした。しかし己の被害を自他に明示できた瞬間、自分もきょうだいに性的加害をしていた記憶が蘇り...

【20】母親を強姦した男が家庭で受けた”性教育”※

性犯罪者はどのようにして生まれるのか。生まれながら犯罪者である人などいないとすれば、何が人をそうさせるのか。

 

この答えを探り始めるとすぐに浮上するのは、犯罪者が加害者になるずっと前に被害者になっていたパターンが著しいということ。

 

性犯罪者、性被害者などをインタービューすることで、社会の闇を暴く動画シリーズSoft White Underbelly(ソフト・ワイト・アンダーベリー)でもこのパターンが多く伺える。監督はロサンゼルス在住の写真家Mark Laita(マーク・ライタ氏、以下M)で、アンダーベリーは直訳すると下腹部になるが、ここでは「社会の闇」という意味がある。

 

"The problem is...what they taught me...they taught me that rape and sexual crimes...is okay as long as you cared about the other person. This is what you do to show the other person how much you cared about them. That's what I was taught." 

問題は、レイプとかの性犯罪は、相手を想う気持ちがあればオッケーだということを彼らは僕に教えたこと。どれほどの想いがあるかということを伝える手段だったと、僕はそう教わった(筆者翻訳)」1

 

こう話すのは米ルイジアナ州出身の53歳男性ジェイムス(以下J)。彼は16歳の時、母親を強姦したとして有罪判決を受けた。

 

J: 僕は学校に入る前からセックスについて誰よりも知っていた。

 

M: それはなぜ?

 

J: 僕の母親、父親、姉二人......家族四人から強制わいせつを受けていたからだ。時間が経つにつれて、どんどん酷くなった。僕は子供ながら、彼らを止めるために凶暴になった。

 

M: 何歳くらいの時から始まったんでしょうか?

 

J: 物心つき始める頃。学校教育が始まる前から。子どもの頃、姉から寝室に行くよう指示されるまま、待っていたのを覚えている。何が起きているか全くわからなかった。僕には選択肢がなかった。「嫌だ」と言っても強要された。

 

僕は凶暴な子供になった......一番上の兄からは来る日も来る日の暴力を振るわれた。僕より5歳年上だった彼を止めることはできなかった。

 

問題は、レイプとかの性犯罪は、相手を想う気持ちがあればオッケーだということを彼らは僕に教えたんだ。どれほどの想いがあるかということを伝える手段だったと。僕はそう教わった。言葉の虐待、心理的な虐待、身体的な虐待、精神的な虐待も。

 

16歳の時に逮捕され、刑務所に入れられた。

 

M: なぜ逮捕されたんですか?

 

J: 強姦。

 

M: 誰を?

 

J: 僕の母親。

 

母親をはじめとする家族全員から見放され、話し相手が誰一人としていなかったことが辛かったと話すJはこう続ける。

 

J: 母親は嘘をついたんだ。僕は教わったことをしただけなのに。僕は性的に「良いこと」と「悪いこと」の判別がつかなかったんだ、本当に。それを理解するのには幼すぎた。僕の家庭ではそれが普通なことだったし、自己表現の一種だった。

 

16歳の時、裁判官に「何が起きたんだ」と聞かれたから、母親から初めて強制わいせつを受けた時のことを話した。

 

その後、母親から「なんであんなことをしたのか」と聞かれた。

 

僕は「あんなことをしたってどういう意味?」と聞き返した。

 

母親は「なんで嘘をついたの?」と聞いてきた。

 

僕は「嘘なんてついていない」と言った。

 

すると母親は「まさか覚えていないわよね?」と聞いた。

 

僕は「なにもかもはっきりと覚えているよ」と言った。僕は当時4、5歳だった。

 

母親は「嘘だ。覚えているはずがない」と言ったが、僕は実際に覚えているんだ。子供であっても覚えている。

 

仮に覚えていなくてもやっていいことにはならない。母親の言動から正気の沙汰ではないことが強調される。

 

Jは続けた。

 

J: ......僕はとても凶暴な人間だ。非常に凶暴だ。

 

M: 例えば?

 

J: 殺人罪、持凶器強盗、第二級(突発的な)殺人未遂、強姦、児童への強制わいせつなどで有罪判決を受けた。僕が犯した犯罪は全て凶暴だ。

 

M: 何年服役したんですか?

 

J: 26年の間に18年間服役した。

 

M:殺人について話してください。

 

J: 正直よくわかんない。ただ、やったんだ。

 

M: どういう状況だったんですか?

 

J: ある女性と関係を持って......やった。詳しいことは話したくない。

 

J: 僕はやりたいことをする。誰も僕を変えられない。僕は凶暴になる。嫌だけど。

 

M: 最後に凶暴になったのはいつですか?

 

J: 二週間前。どうしようもないんだ。変われない。変わろうとしたけど、変われない。

 

例えば、兵隊に「殺していい」と教え込む。「銃を使って敵を殺せ」と。退役してから、争いになった人を殺し、刑務所に入れられたとする。「どうかしている」と言われたって、そのように訓練されたんだ、というのが私の言わんとしていることです。僕は状況をコントロールできることなんてなかったんだ。

「レイピスト=強姦魔」というとただただ恐ろしい印象を受けるが、ジェイムズの話を聞くと、その恐ろしいマスクの裏から傷ついた子どもの心が覗く。

 

ジェイムズが4、5歳の頃から受けていた痛みや孤独は、半世紀経った今も癒されることない。被害者を加害者に変えてしまうほど人格を破壊する性的虐待。それを犯したものに対する刑が軽すぎると思うのは私だけではないはず。再販率の高い性犯罪者は終身刑を受けることを基本にすべきではないか。そして、更なる被害者を産まないために、家庭や学校で子どもや大人に他人との境界線を尊重する性教育をすることが必要だと思う。

 

 

www.youtube.com

www.softwhiteunderbelly.com

 

※題名に”性教育”と書いたのは、もちろん皮肉を込めてのことです。子供が親の餌食にならないよう、他人との境界線を尊重する性教育が子供にも親にも必要です。