『きんしんかん:性加害のニワトリとたまご』

ある本がきっかけで、逃げるように東京に移住した日系アメリカ人の斎氣心。初めて心を開ける人に出逢うも、彼にDVをしてしまう。確執が長年ある母親のような自分に絶望した。原因は、母の「躾(暴力)」と女性ホルモンだと考え、低容量ピルYAZを服用したが、副作用で臨死した。古今東西の代替医療による精神治療を試行錯誤する中、幼児期に父親から受け始めた猥褻を自覚する。それでも問題が雪だるま化するため、両親に虐待の事実を問いただした。しかし己の被害を自他に明示できた瞬間、自分もきょうだいに性的加害をしていた記憶が蘇り...

【15】「通い妻」な私と、彼氏との「通い婚」

「通い婚」という言葉を知って、交際12年に及ぶ私と彼の「型にハメられない関係」を少し肯定できた。一方で「通い妻」という言葉の捉えられ方には、少々複雑な気持ちが残るが、解釈の仕方でスッキリすることもできる。

 

 

通い婚

「通い婚」とは、結婚後も夫婦が同居せずに、夫または妻が相手の住んでいるところに通うこと*1を意味するそう。

 

私の中には「彼と同棲を続けたい気持ち」と、「同棲を続ける自信がない気持ち」がある。「典型的な同棲のカタチにハマらない状況」を言語化できずにモヤモヤしていた。

 

同棲していた頃もあるけど、それは全交際期間の約半分ほどで、今は別居中だけど、同棲したい願望もある。こういう場合「同棲相手」と言えるのか?

 

私は彼と籍を入れてないので「事実婚(通い婚)」になるのかな。事実婚も解釈によって当てはまったり、当てはまらなかったりするみたいだけど、しょせん他人の物差し。

 

彼は「彼氏」以上「旦那」未満。「友達以上、恋人未満」みたいな響きだけど、気持ち的には、友達以上、恋人以上、家族以上。

 

結婚願望はないけど、「婚約者」と書類に書いたことは何回かある。例えば、賃貸物件を探すときや契約の時に、その方が信頼されるだろうという魂胆。

 

でも私たちは「結婚は老後」ということで落ち着いている。これには色々と理由があるけど、今回は割愛する。とにかく実現したとしても何十年も先のことなのに、今から「婚約者」と日常的に呼び合うのは、なんか変なプレッシャーを感じるから、好まない。

 

 

私たちは12年前、都内のシェアハウスで出会ってすぐに交際が始まった。一緒に2回、引っ越して同棲もした。私の名義で△区にある2人入居可能な1DKの賃貸を6.3万で借りた後、私は一年足らずで海外で仕事が決まり、単身赴任。数ヶ月に一度、彼に会いに一時帰国していた期間が3年半あった。リストラに遭った後、私は彼と再び同棲生活をしたが、それからも仕事の関係などで海外に行っては帰るを繰り返した。交際は12年だけど、計6年くらいは別々に生活している。現在も、都内で別々の家に暮らしているが、私が月一のペースで彼に会いに行っている。

 

△区の賃貸は21.5m2で、二人暮らしには狭すぎる。しかも大通りに面しているほか、地下鉄も走っていて、騒音が酷く、私は不眠症になる。南東角部屋なのに目の前にタワーマンションが2軒建って日当たりも悪く、日差しが入るのはわずか1時間。彼はこの環境を「都会的」と捉えられるポジティブさを持ち合わせてけど、私はストレスでしかなく、精神疾患が悪化した。

 

私は発狂し、彼の睡眠の妨げにまでなった。もう自分には住めない環境だと諦め、2021年の秋、私だけ〇市のシェアハウス(共益費込みで6万円)に引っ越した。私物が残っている△区には1万円支払っているので、私の家賃は計7万円。二人で合計12.3万。

 

12.3万出せば、都内で二人用のそれなりにいい物件に住める。彼と同棲できれば、お互い経済的な負担は軽くなる。これまで、それが具現化しなかったのは、私が東京あるいは日本に留まることをイメージしていなかったから。海外に意識が向いていた。日本に拠点を持つにしても東京ではなく、放射能汚染から比較的遠い西日本のどこか良いと思う。だから東京の高い家賃を払い続けるのは、気が進まなかった。

 

でも今回、私だけ〇市に引っ越して実感したことがある。それは彼に会いに行ける距離の範囲内で、自分にとって快適な部屋を持つということの尊さ。

 

1DKだと、どうしても光や音が隣の部屋に漏れる。彼はゲームをするのが趣味だから、その激しい音がうるさい。私はいくら早く床についても眠れないというストレスが常にあった。

 

また彼をストレスの吐口にしてしまっている自分が嫌だった。いまだに会いに行く度、掃除がほとんどされていない環境にキレてしまうのが悩み。けど、私の爆発する頻度が毎日から月一に減った分、お互いの精神的負担も軽減されている。そう思いたい。

 

それに私は今のシェアハウス生活が好きだ。住人も管理会社の人も良い人だし、共用部分が広いのに、管理側が清掃をしてくれるから、掃除は基本的に自分の個室だけで良いという気楽さがあるのは正直、とても助かる。

 

家は広すぎたら大変なことがあるけど、狭すぎてもストレスが溜まる。△区の狭いキッチンで料理するのは大嫌いだったが、○市のシェアハウスには一軒家の家庭用の広さのキッチンがある。それだけで、自炊が苦じゃなくなったのには驚いた。

 

12.3万の部屋ならキッチンも同じくらい広く使える物件は見つかるかもしれない。でも、やっぱり彼も私も心配なのは、毎日顔を合わせていたら、私がストレスで爆発して、今までのように彼を精神的に追い詰め、私が自己嫌悪に陥るという負の無限ループになる可能性だ。

 

私は彼に精神的に依存している自覚がある。そんな状態で同棲するのは、二人の関係性にとって危険。これは経験から痛いほど学んだ。

 

快適な空間で同棲したら、私のストレスもさほど溜まらず、彼に「優しく接することができるようになるかもしれない」という期待はある。やってみないとわからないし、そうなれたらいいなという希望はある。

 

けど、今はまだできないというリスクの可能性が高いため、段階を踏むのが良いとおもったりする。

 

○市のシェアハウスに住みながら、私が彼に会いに行く度にストレスを感じないよう、△区より良い環境に物件を見つけて、彼にはそこに住んでもらい、別居生活を続ける。彼もこれには賛同している。これなら今の私たちにとってちょうどいい距離感を保てる気がする。それは、節約できるお金には変え難いことかもしれない。

 

引越し先は主に彼が住むと言っても、私が「一人でも住みたい」と思えるくらい気に入る物件であることが条件。これは失敗から得た教訓。

 

△区の賃貸を借りた時も、彼が住むために借りたけど、自分がそこで暮らすことは全くイメージしていなかった。だから、いまだにそこにいるだけでストレスを感じるんだと思う。

 

私が住まなくても、彼に会いに行くことが前提なので、私もその空間が好きでないと。この学びは、今後の物件探しに活かしていく。

 

通い妻

「通い妻」という言葉も知った。彼は私にめったに会いにこないので、私の場合はこちらの要素がより強いと思う。が、この言葉には複雑な気持ちが残る。*2

 

通い妻の意味は、常態的には一緒に住まず、その時々で必要な際に相手の住まいに通う女性を指します。例えば通い妻は、相手の洗濯や食事の準備など身の回りの世話のために通うこともあります。通い妻という言葉から、結婚している男女を想像するかもしれませんが、通い妻の意味には、まだ結婚していない状態で、相手の住まいに通っている場合も含まれます。

 

「相手の身の回りの世話のために通う」は、的確だ。私の場合、自分の都合で月一の頻度で会いに行っているが、時間のほとんどを家事に当てている。

 

彼は家事が得意でない。私も得意ではないけど、不潔な部屋に居ても立っても居られないから気づいたらやっている。やらずにはいられない。彼に上手にお願いできればいいのだけど、ブチギレて怒鳴ってしまったり、自分でやった方が早いと思ってしまったりするので、自分の負担が減らないのが悩み。

 

でも彼は私が海外行っている間も家賃や光熱費などを毎月支払ってくれていて、荷物を預かってくれて、私の行きも帰りも気持ちよく接してくれる。親に頼れない私にとって、世界に一つでも「帰る場所がある」ということは、この上なく「有難いこと」だと帰る度に実感する。彼との関係を「持ちつ持たれつの関係」と思えると感謝の気持ちが生まれる。

 

だから「通い妻に成り下がる」という言葉には、複雑な気持ちになる。私もどこかで、そういう風に捉えてしまう節があるから、部屋が汚いと感じる度に怒りが爆発してしまうのだと思う。

 

でも彼が得意でない家事をやっているのは、頼まれているからでなくて、私がやらずにはいられないから。

 

上手な頼み方を知らないという私の欠点でもある。でもそれは男に家事をさせなかった先祖代々受け継がれてきた習慣が、現代社会の需要にそぐわないからであって、私だけの責任ではないのも確か。なので、自分のことばかり責めないようにしたい。

 

一方で彼が「安心感」という、生きていくために大切な感覚を、私に与えてくれているというのは大きい。私は物心つく頃には実家で安心感を覚えたことがないので、彼に出会うまでその感覚さえ知らなかった。今も安心感の感覚に慣れるのに苦戦している。

 

私は、ありのままの自分を愛してくれなかった親の元を離れてせいせいしている。だから愛情を感じない人のところに通おうなんて思わない。彼からは愛情が感じられる。お互いできることで、支え合っているのだと思いたい。

 

もちろん、自分がもっぱら家政婦・召使いという立場だったら、やっていられないと思う。そう思わなくていいためにも、家事代行を雇ったりして、自分の負担を減らす工夫も必要。

 

私の課題の一つに「人に頼る」スキルを学ぶというのがある。

 

彼が家事を気持ちよく自発的にやってくれるようにするにはどうすればいいだろう。下手でも、ちょっとでもやってくれた時にオーバーに喜んでみる?名案だけど、それには心の余裕が必要不可欠。まずは心の余裕を作らないと。これがそもそも難題だけど、学んでいくしかない。

 

私たちは結婚願望も子供を育てる願望も皆無だから、自然のこういう交際のカタチになっているんだと思う。結婚生活や子育てがなくても、仲良くできる方法を試行錯誤して、ふたりに合った方法を編み出していけばいい。