【10】小寒の 苺のショート 自分用
彼に会いに行く途中、ショートケーキを買った。
一切れだけ。自分が食べたい分だけ。
「ケーキ一切れ買い」は今回で2回目。前回は先月、誕生日の翌日だった。初めてだったので、ドキドキしてショーケースを何周もし、自分の誕生日を口実に勇気を振り絞ってやっと買った。
二度目の今回は自信満々というか、ハキハキと「ショートケーキひとつください」と言えた。どんなことも一度やってのけるとハードルが下がる。最初の一歩の重大さは侮れない。
彼と昼食をとった後、珈琲を丁寧に淹れた。彼は念願の麩菓子を、私はショートケーキを食べるため。
ショートケーキを美味しくいただくための珈琲。
コーヒーを美味しくいただくためのショートケーキ。
持ちつ持たれつの関係。
いつもより珈琲を上手に淹れられた。味の深みが全然違う。今日はショートケーキと一緒にいただくというだけで、コーヒーを淹れる時も丁寧になったからだろう。
彼にショートケーキを味見させたけど、サッパリし過ぎだと言った。確かに、サッパリとしているが美味しい。彼は麩菓子に大満足していたようだが内心、ちょっと羨ましかったのかもしれない。
食べ終わった後に決めた。毎月、ショートケーキをひとつ買って食べ比べしよう。
そしてなんとなく思った。近い将来、ケーキ屋さんで一人用の箱(一切れ専用)が普及する、と。