ラ・プティット・シュルプリーズ(和:小さなサプライズ)。
スイーツ好きのハウスメイトNSさんが買ってきてくれた苺のショートケーキ。
私の分まで買ってきてくれただけで感謝感激だった。
「お金を払う」と言うと「いつも色々ご馳走になってるから」と言われた。
私は「でも」と言って六百円をテーブルに置いたら、NSさんの顔つきが厳しかったので「あ、困りますよね」と言ったら「ううん」と言ってくれたが、私は自分の受け取り下手を反省した。
翌日、テーブルに置いたままのケーキ代を素通りするNSさん。私は引っ込めるのもなんか違う気がして、そのままにした。NSさんには少々気まずい思いをさせてしまったと思う。ごめんなさい。
私とNSさんとHGさんが座っているテーブルでKKさんが「この600円、誰のですか〜?」と聞いてくれたが、ほぼ同時にHGさんが別の質問をKKさんにしたため、話題は流れた。NSさんは無反応。忘れていたのではなくて、わざと受け取らなかったことを確信した。これは、お金を強引に払った私がいけなかった。NSさんの気持ちを素直に受け取れなかった私がいけないのだ。
NSさんが席を外した時、KKさんが再び600円の持ち主は誰かと問うた。TYさんが「もらっちゃっていいのかな〜」と冗談ぽく言ったので私は「これはケーキ代としてNSさんに渡したつもりなんですが……」と言った直後にNSさんが戻ってきた。KKさんが「これNSさんのですか?」と聞くとNSさんは「私のじゃないです」と言う。私はお金を自分のポケットにしまい、NSさんに「ありがとう」と言った。NSさんが「ケーキは食べましたか?」と聞くので「まだです」と返答したら、呆れたように「早くたべなきゃ。生クリームですよ?」と言った。
確かに……!スープだって時間が経てば冷めて美味しくなくなっちゃう。ケーキだって早く食べた方が美味しい。ぐずぐずしてる場合じゃない。これは賞味期限との闘いでもある。
食べる覚悟が決まれば、やることはひとつ。さっさとコーヒーを淹れる。もう夜だったけど、ケーキのお供に美味いコーヒーは欠かせない。月初めに行きつけの珈琲店で挽いてもらったブラジル産のスペシャリティコーヒー豆の袋を開封し、ハンドドリップ。生クリームと苺が二層ある。
中心の上部の層にはカスタードクリームも。
三口目の写真。最初の二口はケーキに夢中で撮り忘れた。全体的に苺のスライスが大きく、見かけ以上に沢山入っている。
ブラジルコーヒーとの相性も抜群。
こんなに贅沢なものをハウスメイト複数名がいるなか、独り占めしていることへの後ろめたさを感じざるを得ないと言ったら、「ひとり分のケーキは一人で食べるもの」とKKさんが肯定してくれた。私が「美味しい」と漏らすとTYさんが「よかったねぇ」と囁く。みんな羨ましがったり、過剰に反応することもなく、普段通りに各々のことをしていたので、精神的に助かった。
いつだって名残惜しい最後の一口。
ご馳走様でした。無事完食。NSさん、至福のひとときをありがとう。
去年の誕生日の翌日、ケーキを一切れ買って持ち帰ることをデビューした私。
それだけでかなりの自身の成長を感じたものだが、その時だって自室でこっそり、独りでいただいた。
今回は皆んなの前で自分だけが食べるという更なるハードルを超えられた。
天罰は下されなかった。
罪悪感を感じて自分を苦しめていたのは自分の頭の中の声。
むしろ周りからは「美味しいうちに食べて」「よかったね」という声をかけてもらった。
やさしい。
私は「毎月、苺のショートケーキを食べる」と宣言していたが、まさかNSさんが奢ってくれ、デリバリーまでしてくれるとは思いもよらなかった。
なんというラ・グランデ・シュルプリーズ。
今回「ひとり分の苺ショートケーキ」から学んだことは、「受け取り上手になる」でした。
ありがとうございました。