「やめて」・にげて・はなして。身内から子どもへの性犯罪:被害者から加害者になった私・犯免狂子が精神治療から学んだこと

4歳から父の猥褻・母の体罰が「愛情表現」と教わり、混乱の吐口としてきょうだいに性的・精神的な加害をしていことを治療中に自覚。3つの気づき:①家庭内で子どもへの性犯罪が、加害者の「無自覚」のうちに起きている。②性被害を否定することは、自己防衛本能が正常に作用しているからだが、否定し続けても苦しみは増す一方である。③被害を認めて精神治療を初めないと、被害者も「無自覚」のうちに自他を傷つけ加害者になってしまう可能性が高い。精神疾患「複雑性心的外傷後ストレス障害(C-PTSD)」歴35年以上。

【26】安楽死は、彼を看取るまで一旦保留

彼と電話ではなした。

最近、YouTubeでハマってるチャンネル「ソフト・ホワイト・アンダーベリー(Soft White Underbelly)」のこと。LAの中心地にあるアメリカ最大級のスラム街スキッドロウSkid Row)で暮らす人々などにインタビューする約2000本の動画。それを全て一人で行う超一流写真家マーク・レイタ(Mark Laita)の活動に感銘を受けている。私も未来の子供たちが、家族などから性的虐待を受けずに安心して成長できる社会を創造する目的を持って活動していることなどを伝えた。

 

話の中で私が「長生きはしなくてもいいと思ってるけど、生きてる間にやれることをやる」と言った。先日、安楽死をしようと閃いたのでそのような言葉がでた。すると意外にも彼は強く反応した。

 

「長生きしなくてもいいってどういうこと?」

 

言葉に詰まる私に彼は不満そうに続けた。

 

「『一生かけて罪を償う』って言っていたのに」

 

私は2年前、別の男と関係を持ち、彼を傷つけた。その罪を一生かけて償うと言っていた。

 

「それは約束する」

 

「じゃあなんでそんなこと言ったの?」彼は珍しく容赦ない。

 

「いやその、ダラダラと生きて建設的なことを後回しにしてしまうよりも、期限を決めてやることをやった方がいい、と思ったから」

 

「あなたの言葉には一貫性がない、一生かけて罪滅ぼしするって言っていたのに」

 

「それはつまり、死ぬまで連れ添ってもいいってこと?」と聞いた。

 

「死ぬまでならね」

 

彼らしい言葉に私は思わず笑ってしまった。

 

「死ぬまで?死んだ後は?」

 

「それは嫌だ」

 

私は笑いが止まらなかった。

 

私はどんなに頑張っても彼を苦しめることしかできないと思っていたから、こんな自分は早く死んだ方がいいと思っていた。なのに、その私を必要と思ってくれていたと知れて嬉しかった。彼曰く「頼み事があるかもしれないじゃん。だから身内には自分が死ぬまで生きて欲しい」と。

 

スキッドロウで暮らす約5000人の人々には、頼れる家族や友達がいない人がほとんど。独りで生きて行くしかない彼らは、スキッドロウに辿り着き、あるいはそこで育つ。幼少期から身内からの性的虐待やネグレクトを経験している人が圧倒的に多い。頼れるものが何もない中、少女は自分の身体を売って生き延びる。群がる大人たちの中にはヒモ、ヤクの売人やギャングが多く、彼らもまた複雑な家庭環境で育っている。

 

私はそんな彼らに共感する。私も似たようなものだけど、私には彼氏がいる。彼も幼少期から父親から虐待を受け、何度も死にそうになっている。でも彼は暴力を振るわない、とても優しい人だ。そんな彼が私を必要としてくれている。そんな彼から遠回しに一生連れ添ってほしいと言われた。これは、幸せなことだ。私は彼を見届ける覚悟を決めた。