『きんしんかん:性加害のニワトリとたまご』

ある本がきっかけで、逃げるように東京に移住した日系アメリカ人の斎氣心。初めて心を開ける人に出逢うも、彼にDVをしてしまう。確執が長年ある母親のような自分に絶望した。原因は、母の「躾(暴力)」と女性ホルモンだと考え、低容量ピルYAZを服用したが、副作用で臨死した。古今東西の代替医療による精神治療を試行錯誤する中、幼児期に父親から受け始めた猥褻を自覚する。それでも問題が雪だるま化するため、両親に虐待の事実を問いただした。しかし己の被害を自他に明示できた瞬間、自分もきょうだいに性的加害をしていた記憶が蘇り...

【13】浮気

浮気をしたのは、交際相手と別れなかったからでもなく、浮気相手が好きだったからでもなく、自分と別れたかったからだった。

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ある日、突然、出会って間もない男から「明日デートしよ」と笑顔で言われた。

 

その男は、共通の知り合いカップルを通じて数日前に知り合った。私より10歳年上の40代後半で、同業者であった。私の長い話を聞いてもらっていたので、どちらかというと好印象ではあったが、異性として全く意識していなかった。

 

私は「デート?」どういう意味だろうと思った。私に彼氏がいることは男も知っているはず。でも、その屈託のない笑顔から悪意は感じられず、なんとなく「いいよ」と返答した。時刻は夜中の2時を回っていたので、私は自分の寝床に帰った。

 

翌日、男が出店していた場所に行っても、姿はない。「明日デートしよう」とは言われたものの、何時からどこで何をするのか全く聞いていなかった。そして昼過ぎ、男と鉢合わせた。

 

私が挨拶すると、男は「寝不足で、マッサージを受けていた」と言った。確かに、この人はいつ寝ているんだろうと不思議なほど、男が連日2時過ぎても休む様子がないのを伺っていたので、私は苦笑しながら「でしょうね」と言い、すれ違った。その時、男から例の「デート」について言及は一切なかった。私から聞くのも筋違いな気がしたので何も言わなかったが、モヤモヤした。

 

その日も、翌日も、翌々日も、男と顔を合わせた。それまで通り、店で休ませてくれたり、お茶を淹れてくたりしたが、弁解も説明も何もない。私は日が経つにつれて、男のことが益々気になった。男はどういうつもりだったのだろうか。

 

祭り最終日の夜、私が寝床として張っていたテントが、キャンプファイヤーの火の粉で穴が開きそうになったので、撤収した。風邪がなかなか治らない状態で、生理中だったので、横になりたかったが、小雨も降っていた。雨宿りができるところは、男が出店していた店しかなかった。男に事情を話しに行くと、店の裏で休んでるように言われた。私はお言葉に甘え、横にならせてもらった。

 

目が覚めると、男が私に毛布をかけてくれたり、毛糸の靴下を履かせてくれたりしていた。私はその時、ときめいた。

 

翌日の夜、男から誘われるまま、私は男のテントに入った。「デートをすっぽかされた件」があったので、私は男から遊ばれているのだろうと思っていたので、割り切って「遊んでやろう」という気持ちだった。約束を